最高裁判所第二小法廷 昭和47年(オ)91号 判決 1973年6月15日
上告人
高木藤雄
外四名
右五名訴訟代理人
山田直記
被上告人
住友商事株式会社
右代表者
植村光雄
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人山田直記の上告理由第一点について。
所論の各点に関する原審の認定判断は、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)挙示の証拠に照らし首肯するに足り、右認定判断の過程に所論の違法はない。
同第二点について。
商法二〇四条一項但書は、株式の譲渡につき、定款をもつて取締役会の承認を要する旨定めることを妨げないと規定し、株式の譲渡性の制限を許しているが、その立法趣旨は、もつぱら会社にとつて好ましくない者が株主となることを防止することにあると解される。そして、右のような譲渡制限の趣旨と、一方株式の譲渡が本来自由であるべきこととに鑑みると、定款に前述のような定めがある場合に取締役会の承認をえずになされた株式の譲渡は、会社に対する関係では効力を生じないが、譲渡当事者間においては有効であると解するのが相当である。
ところで、株式を譲渡担保に供することは、商法二〇四条一項にいう株式の譲渡にあたると解すべきであるから、叙上の場合と同様、株式の譲渡につき定款による制限のある場合に、株式が譲渡担保に供されることにつき取締役会の承認をえていなくとも、当事者間では、有効なものとして、株式の権利移転の効力を生ずるものというべきである。
してみると、これと同旨の原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(小川信雄 岡原昌男 大塚喜一郎)
<上告理由省略>